はじめに
デザイン言語という言葉に出会ったのは10年前。大学時代の奥出研究室。以来、研究室、テレビ局、ウェブ制作、地方自治など多くの現場でずっと利用させてもらっています。10年間どのプロジェクトでも最初にやることはデザイン言語で整理しています。とても有用なツールです。でも、恥ずかしながら在学中はよくわからなかったので、現場で自分が使えるように、腑に落ちるようにまとめ直してきました。学術的なまとめではなくて、現場用です。モノづくり・サービス開発に関わる方の一助になればと思いまとめました。特に学術的ではないです。
デザイン言語のメリット
デザイン言語を利用すると、チームで行うモノづくり・サービスのスピードや質が上がります。企画者、デザイナー、プログラマーで共通言語を持つため、意思疎通を図る上でとても有用です。アイデアを企画に、企画が現実になるのことをサポートできます。
デザイン言語ってなんだろう
21世紀の一部のモノづくりは、モノ・サービス自体が複雑化しています。1人の職人さんにだけでは完結しないモノを作るためには、多くの人が関わることになります。プログラミングが必要だったり、ネットワークの知識が必要だったり、キャラクターが必要だったり、UI設計が必要だったり、、、などなどたくさんの専門性がモノづくりには必要になってきます。
プログラマーとプログラマーはプログラミング言語を通して、モノづくりが可能です。デザイナー、イラストレーターも同様です。各専門スキルを繋ぐのがディレクター、プロダクトマネージャーと呼ばれる人ですが、この人たちのスキルがサービスのボトルネックになることが多いのも実情です。
デザイン言語は専門性を持った人たちが、モノ・サービスを作る上で知ってると楽な言語です。例えば、イタリアの人とロシアの人とその国の言語知らないとコミュニケーション難しいですよね。それに近くて、プログラマーとデザイナーと同等のスキルないとモノづくりに意図を反映させるの難しいから、みんなで共通言語しゃべろうよ。という感じです。
デザイン言語で抑えておくべき4つの単語
言語といっても、主だった単語は4つで大丈夫です。「哲学」「ビジョン」「アイデア」「コンセプト」です。
「哲学」はあなたがモノ・サービスを作る上で、ぶれないための礎です。人生でお金よりも大切だと考えるものが哲学となりえます。何か新しいことをするとき、多くの人から厳しい意見をもらいます。また金銭的な面で全く意味のないことをしているんだろうと考えることもあります。そうした時に支えとなるのは「好きだからやってる」「楽しいからやっている」という自己の内面からの欲求です。外部・他者との比較で何かを作ろうとする場合、心折れます。
哲学を作るヒントとして、「思想」と「経験」という2つをミックスするアプローチを私はよく取ります。「思想」は、先輩方が見つけた広く世間に知られている考え方を指します。「経験」はあなたが今まで生きてきた中で、間違いないと思えるコトを指します。広く一般の人に浸透した考えと、個人の経験で培ったものを混ぜ合わせると、多くの人にわかりやすいもので、自分がやりたいことを哲学におくことができます。
思想:落語とは人の業の肯定である(立川談志さん)
経験:学生時代何度となくピンチを笑いで救われた。
哲学:人を救う笑いが好きだ
「ビジョン」は作り上げたモノ・サービスによって、世界がどう変わるといいかということを言葉で表したものです。私は芸人さんがとても好きで尊敬していますが、私の友人で面白い人たちは人前で話すことが苦手な人もたくさんいます。人前に出ずとも、頭の中を表現して、多くの人を笑わせる場所ができればなと思っています。教室の隅で3人くらいで集まって毎日面白いことを言い合っている人たちが大好きです。また、普段あまりしゃべらないけど、ぼそっと言ったことが極めて面白い人も大好きです。そういう人たちが教室の垣根を越えて、全国の教室の隅にいる面白い人が楽しみあえる場所を作りたいと思います。
ビジョン:人前に出るのが苦手な面白い人が活躍して、人を救う笑いが生まれる
「アイデア」はビジョンを実現させるための部品、仕掛けです。アイデアはたくさん湧いてきます。1アイデアがそのままコンセプトになる場合もありますが、基本的にはたくさんアイデアを考えることが組み合わせの多様性を生むので、時間をかけて、頭をフルに使って考えます。アイデアを考えるのが苦手なひとは、1時間あれば読めるアイデアのつくりかたという本は名著なので一読しとくとよいです。
デザイン言語の良いところは、哲学・ミッション・ビジョンを共有した上でみんなでアイデアを考えられるところです。ここでは実現性の有無を問わず、否定せず、みんなの頭を共有することが大切です。
アイデア:ネットを使う 3秒ですぐ笑える 写真に一言つける お題もボケもみんなが出せる 集合知
「コンセプト」は仕組み、メカニズムです。同じ部品を使っていても、仕組みが違うとまったく別のものが生まれ得ます。バイクと車みたいな感じですね。たくさんアイデアを出して、ビジョンを成立させるためにどう組み合わせればよいかを試行錯誤します。コンセプトを作ることが一番難しいところであり、腕の見せ所でもあります。専門性のスキルがあるメンバーがいると、実現可能な組み合わせが増え、一人で作るよりもコンセプトがよりよいものになる可能性があがります。
コンセプト:写真で一言ボケて、3秒で笑えるウェブサービス
というのが、今までみんなと作ってきているボケてを題材にした現場で使えるデザイン言語の説明です。こうした4つの単語を一緒に作る仲間と共有しておくと、楽しく、効率的に、モノづくりができます。デザイン言語のよいところは、方法論ではありますが、利用する人、メンバーによって出来上がるものがまったく異なるということです。画一的なやり方で、多様性のあるモノづくりが行えるのでとても助かっています。